私と友人は今日は台湾の東海岸を攻めるのだ~! と鼻息も荒くしゅぱぁ~~つ! 台東市からバスに乘って・・海岸線を北上!
静かで きれいな海岸線を走っている時は ”いいぞ! いいぞ~!” と思っていたが・・そのバス 突然に山の奥の方へ走る・・。 友人と二人で顔を合わせて・・”どうする~?!” とかなり不安・・。
だが ここで 慌てて運転手に降ろしてもらう訳には行かない・・あっと言う間にバスはぐんぐんと山を上って行くのだ・・。 深い深い森を縫い・・谷間があり・・大きな河も流れ・・。
こんな所に置いてきぼりになったら 絶対に遭難するし・・。
バスに乘ってる他の乗客は我等の他にあと二人だけ・・。 まぁ~・・このバスの終点までゆくっきゃ~ない・・でもって このバスが又戻る・・(と言う希望的観測)時に まだ乘ってれば・・戻れるさ~~・・・と二人は気弱になるばかり・・。
着いた・・・山奥の村・・。 ん~~・・自然がいっぱいで空気がきれい・・と そんな悠長な事は言ってはいられない・・。 終点でバスから降りろと言われても 折り返すには ガン! として そのまま乘っていよう! と思ったが・・バスの運転手の気迫はすごい! 「降りろ! 降りろ! ばかじゃねぇ~か!! 終点なんだから!!」と(言ってる風情で)がなる・・。
あまりの気迫で降りないとぶったたけれそうな勢いなので・・慌てて・・降りる・・。
降りたら・・おっちゃんがいたので・・そのおっちゃんに戻るバスはあるか? って 漢字筆談を迫る・・。 でもおっちゃんは逃げ腰・・。 地図も出して・・私は必死で 戻る場所を指差すが・・やはりおっちゃんは逃げ腰・・。
そうこうしていたら・・穏やかの顔をした 杖をついたおじいちゃんが近づいてきて・・”どうしたの?” と日本語で言うではないか! それも ”おじいちゃん あんた日本人?” ってな感じの日本語なのだ。
地獄に仏とはこの事。 焦った私は日本語早口で おじいちゃんに質問攻め・・。 で 気がつくと・・おじいちゃんちょっと困った顔をしている・・。
その時点で・・私は ”台湾のお年寄りは日本語が話せる” と言うのを思い出した・・。 ゆっくりと地図を見せつつ・・私等ここに戻りたいんです・・と言うと 「お~私もそっちに行くよ」というではないか!
「すぐそのバスは来るので 一緒に行こう」とも言ってくれた。 わ~い! わ~い! こんな素敵な事があっていいのだろうか!? ってな感じで 友人と二人はニマニマ・・。
やって来たバスに乗り込む人は 我等とおじいちゃんの他に 多分いなかったような・・。
歳は85才・・今はもう日本語はほとんど使わない・・でも 懐かしい言葉を話すおじいちゃんは嬉しそうだった・・。 彼は我々が行った山奥よりも もっともっと山奥に住んでいる・・もう農業もしない・・昔は田んぼもやった 文旦の木も育てた・・今は体があちこち動かなくて・・何もできない。
4人の子供は全員町に移り住んだ・・奥さんはずっと前に天国に行ったよ・・。と色んな事を話してくれた。 お金があれば 色んな所に行きたかった・・でも 働いても税金と子供を育てる費用で貯金なんかできなかった・・と寂しそうに語った。
”ひとりぽっちは厳しいよ・・” とおじいさんが言った時には 私の奥の方でこみ上げる物を感じた・・。深い話は日本語ではできない・・。と おじいさんは どかしそうに・・それでも トツトツと日本語を話した・・。
彼は 我等二人と出会っておしゃべりができるのが嬉しそうだった。 後から・・後から・・言葉を選びつつ・・とても解りやすく・・話してくれた。 私達が質問しなくても・・ゆっくりだけど 彼の中から溢れ出るように話を続けた。
彼の小学校時代は全部日本語だったそうな・・。 日本軍が占領していた頃は地名も全部日本名に変えられたそうな・・。彼の話で戦争がとても近い所に感じてしまった・・。
台湾の歴史は 占領され続け 原住民は支配され続けだったのがあちこちにうかがえる・・。 だから今現在では 台湾国民の政治に対する関心はとても強いと言われている・・。
福島の津波は大変だったね。 かわいそうだったね・・と心のこもったおじいさんの言葉は 私の心を突いた・・。
おじいさんは 表情も変えず・・タンタンと話を続ける・・その一言 一言が 心を付く物ばかり・・そして考えさせられる事ばかりだった。 おじいさんは一人ぽっちで誰とも話をせず一人暮らしをしているけど・・色んな事を心の中で想い続ける人なんだな~・・と思った。
おしゃべりをしていたら アッと言う間に目的地に着いた。 とっても小さな町で お買い物をしにやって来たとおじいさんは言ってたけど・・どこで何をお買い物するのだろう・・? と思うほど 店はあまりなかった・・。
でも 久しぶりの”お買い物日” とあって彼はちょっと浮き立っていた・・。
何をお買い物するの? と訊いても 笑って誤魔化された・・。 我等はおじいちゃんの買い物に興味津々・・だから・・バスから降りてもまだ 我等がおじいちゃんにくっついていた・・。 そんな気配を彼は察したのか・・
「じゃ~ここでお別れしましょう」と言う・・。
我等は しぶしぶ・・彼とお別れすることにした・・。 彼は私の手帳に達筆で 自分の姓名を書いてくれた・・。
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