2020年4月26日日曜日

思い出の手袋

最近寒くなって 何気に見た この手袋。
これは 数年前 アメリカに住むRogerの従姉妹からもらった物だ。

彼女は 空港に 何時間も遅れて出迎えた・・。

そして又 ある場所に連れてってくれたのはいいが・・そこに又 戻って来ると言って その約束の時間に 又 数時間遅れてやって来た。
クリスマス時期で 寒さが強く・・私とRogerは 寒さを凌ぐ所もなく 体の芯まで冷え切って・・その頃になって 私はその従姉妹が憎くもなって来た。

数日後 私達は 彼女の家のディナーに招待された。
彼女は もう何年も人を家に招待した事もなく 何年も人のために料理をした事も無い。
でも 一生懸命料理したのよ! と言って 素晴らしいお料理を出してくれた。

そして ホステスになる彼女は言葉少なく・・ホストは 彼女の元夫と言う人がやって来てくれた。

彼はピシッとしたスーツを着て・・素晴らしい紳士に見えた。
あまり笑顔はなかったが・・卒なくいろんな会話を持ち出し・・

そして 早々と・・「明朝早くから手術があるから・・」と言って そそくさと帰って行った。
彼は 権威ある外科医らしい・・。

ホステスである彼女を観察していると 言葉も弱々しく・・ 元夫に我らをもてなす事にすべてを委ねている。

彼女の作ったタイルのテーブルは偉大なアーティストが作ったのか? と思える程ダイナミックで美しかった。
彼女の家全体のインテリアも彼女のアーティスティックな物で埋め尽くされていて・・私はため息が出るほど 美しく感じた。

その後又 彼女に誘われて 色々観光巡りをしてくれた。
その時彼女は この手袋 他 スカーフ ジャケット 毛布など てんこ盛りの寒さしのぎの物を彼女の車に積んで来てくれたのだ。

私が以前彼女の出迎えを待っている間 ものすごく寒かった・・と言うのを 怒り任せに言ったのを覚えていたらしい。

我らの乗る後ろの座席の足元に スマホが3個も4個も転がっていた。
全部壊れているとの事。
彼女は 常に 言葉が見つからず口ごもる 癖がある。

カフェに入った時・・何気に私が言った言葉・・人との付き合いが苦手・・と言うのに彼女が食らいついて来た。
それから 堰を切る様に彼女の言葉が飛び出し 我ら二人の会話は 限りの無いほどはずんだ。

このアメリカの旅で 色んな夫の親戚の人たちと会ったが・・・彼女の様に 私との間に膜をはらない人は他に一人もなかった。
完全に膜を感じて 私はいつも 膜の中に閉じこもっていて・・気分が優れなかった。

が 彼女だけは 他のだれともあまり話はしないのに・・私にだけは 自分をさらけ出した。

親戚連中が口を揃えて 彼女は精神的に色々問題があって・・家に引きこもり・・私達をディナーに招待したのは 彼女にとってとんでもない冒険なのだそうな。

そして彼らは 彼女が我らをディナーに招待したと言うのを聞いて信じられない・・きっと彼女は あなた達が去ったあと年日も寝込むよ・・・と言っていた。

それを知って 私は 彼女との別れ際に 「あなたは我らが去ったあと 何日も寝込むぐらいのストレスを与えてしまって・・ごめんなさい」と言うと・・

彼女は素直な笑顔で 「何日寝込んでも あなたに会えた事はその価値があったわ」 と言ってくれた。

彼女の人生は感性が強すぎて・・世間の俗世界でうまくやって行けないと言う問題を抱えているらしい・・。

この手袋は私が もどそうとすると・・「あなたに似合っているわ 持って行ってください」と言ったので ありがたく貰って来た。 以来 この手袋は私の宝物になった・・。

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