2021年1月22日金曜日

生きてて良かった!

 ショパンのノックターンを弾きたい! と 思ったのが もう20年ぐらい前・・って言っても 私はもうすぐ50歳になる頃・・。

そんな年になって ピアノなんて習った事もなければ おたまじゃくしが かろうじて読める程度。 おたまじゃくしに沿って 指が動くって事も無い・・。

ましてや 楽譜に#とか ♭とかが沢山あると もうお手上げ! 頭がガンガンして来る・・。

なのに! ショパンのノックターン9−2 なんぞ聴いてしまったもんだから もぉ〜〜夢心地にさせてくれるこの曲 自分で 弾いたら もう死んでもいい!とさえ思うくらい 夢みた・・。

だが エリーゼのために と違って この曲の難易度 高い! 高い! とりあえず エリーゼのためにでも 弾いてからにしたら? って 普通の人は言うだろう・・。

しかし! そんな誰でも弾く曲には ぜぇ〜んぜん興味は無い・・。 なんせ ショパンのノックターンが私を夢心地にしてくれるのだから・・。

それから 鍵盤と指との戦いが始まった・・。 音符を どれみふぁそらし・・・と一つ 一つ数えつつ・・お! このおたまじゃくしはシの音だ! さて 次のおたまじゃくしは? どれみふぁそ・・お! これは ソの音・・

とまぁ〜 和音なんか一つの音が3つも4つも重なっているから とんでもなく時間がかかる・・。 んって持って いっしょううせつに おたまじゃくしが何十もあると それだけで うんざりするくらい時間がかかる・・。

それから 岩をも削る様な作業が始まる・・。

しかし・・一人で 岩削ってたって ノックターンになる事は不可能・・。 先生についたら 少しはラチがあくかな・・? と思ったが・・ もし 私の様な 初心者も初心者が こんな曲を弾きたいとか ほざいたら・・

ばかこけ〜〜! てめぇ〜 10年 いや 100年はやいんぢぁ〜! と どなられそうだ・。

指の練習とか 音符の読み方とか・・基礎をやれ! 基礎を! と ぜぇ〜〜ったい言われる・・。 そんな事を言われたら・・もうこの世はおしまい・・。

しかし・・もしかしたら 手伝ってくれる先生がいるかも?・・と 私は思い続け・・ やっと 怖くなさそうな先生を見つけた。 が! 

練習とか 基礎とか無しで このノックターンだけを弾きたい。 これさえ弾ければ満足なんです!

とか 言ってもいいのだろうか・・? と 思いつつ・・怒鳴られるのを覚悟に オズオズと私は切り出した・・。

と!・・その先生 柔らかい・・包む様な笑顔で・・「一緒にやりましょう!」と言ったではないか!! 

私 「でも・・! でも・・・ 私 今は全然だめなんです・・。でも 他のは何も弾きたくないんです・・この曲だけ弾きたいんですが・・・・・・」

先生「その曲が好きで あなたがその曲を弾きたい! と思う心があれば その時点で あなたは 80%はその曲が弾けているんです。 あとは 仕上げですね!」 と 笑顔で言う・・。

いやいや あんた 私がどんなにできないかを知らないから そんなアホな事が言えるんだと思うんですが・・と 心では思ったが・・しかし! 80%はできてると言う先生の言葉は その時点で 私の人生を変えた と 言っても過言では無いだろう!

つまり その瞬間に 私は 人生の生き方 行き方を 学んだ様な気がした・・。

つまり・・やる気さえあれば そしてやりさえすれば なんでも可能なんだ・・と言う事をその先生は教えてくれた様な気がする・・。

それから おたまじゃくしとの戦いが その先生と始まった。 私の手が小さすぎて どうしても 広がらない・・複数和音で どうしても 私の指では その和音を全部抑えきれない・・とかなっても 先生は救いの手を差し伸べ・・この音はスキップしても大丈夫・・と 教えてくれた。

そして 楽譜の中で どうしても 物理的に私の手では 無理! と言う箇所は どの音をスキップすればいいかを全部教えてくれた。とんでも高いレベルの音楽家で無い限り そのたった一つの音がなくても 十分に 曲はきれいにちゃんと聴こえる・・。

のべつ くまなく ピアノを弾いて無いときでも 私はその時は ノックターンを聴きまくっていた・・。 車を運転しているときも 流れる・・いつでも どこでも 私の耳にはノックターンを聴く生活をしていたような気がする・・。

その時 私が心を込めて弾いたとしても どうしても CDから流れるのと全く同じ様には流れないのだ・・。 つまり 私の感情が どうしても入ってしまって・・CDのそれとはあちこちで違って来るのだ・・。 こりゃ〜 どうしたもんだ・・? と 又 先生に質問する。

先生は ある資料を持って来た。

色んな有名なピアニストが 同じ曲を どんな調子で どんな箇所を どんな長さの時間で弾くか? の比較表を私に見せてくれた。

それを見た私は愕然とした・・ つまり そのピアニストによって どえらい違うのだ・・。

つまり・・先生が言うには CDがベストでは無い・・自分の感情が一番大切・・そしてその感情を一番大切にして弾く! とおしえてくれた・・。楽譜に指定されている 速さとか強さとかはあくまでも 提案であって・・それが機械的な確実な長さ 強さである必要は無いのだ。

あくまでも先生は 私の味方なのだ・・。気をよくし続けられた 私は一心不乱にその曲に打ち込む事ができた。

そして 数カ月後 私はほとんど暗譜して 一応仕上げたのだ。全く持ってレベルは低い弾き方だが・・階下に流れる私の弾くのを聴いた人が 何人も CDだと思った・・と言ってくれたので・・ 

それに 私にしてみれば も〜! 完全に満足の域に達していた・・。

そして それから20年後 一曲通して暗譜したのに 今は全く指は動かない・・が! 先生の言ったあの 「やりたい!と言う気持ちさえあれば80%はできてる!」の言葉は忘れてはいない・・。

今はダンスに没頭している日々・・。 そして チンタラとダンスクラスに通う・・だが 退屈で死にそう・・。 

さっそうと足を振り上げ 舞台でショウ的に踊るダンスに夢見ている。 若くて 細くて セクシーな美しい女性の踊りを見る度にため息がでる。

70歳に手の届く・・ブクブク太って来た腹ボテ老女が そんなのを夢見てどうする・・? と・・思っていたが・・やっぱ あのピアノの先生の言葉は私の脳裏をかすめる・・。

もしかして なんかの拍子に歩くこともできなくなれば・・病気になって 寝たきりとかなったら・・。 そんな事は70歳に手の届く私の年では いくらでも可能性がある・・。

と そんな事を考えていたら 今はまだ 2本の足が動くのであれば・・やってみてもいいかも・・? と思い始めた・・。 しかし・・先生に言う勇気は無い・・。

先生のビデオを見ると 世界チャンピオンレベルの美しい 若いダンサーと踊っている。 その先生に 「私もあぁ〜ゆうふぅ〜に踊りたいんだけど・・」なんて 死んでも言えない・・。

と・・悶々としつつ・・が そんなモタモタしてる時間なんて 私の人生には残されてはいないのだ・・。 今しか無い! だめもとで とっし〜〜ん! 

そしたら 先生 輝いた目で ”We can do it!" と言ってくれた。 ”YOU can do it" と言わずに ”WE” と言ってくれたのが うれしかった! 一緒にやろう! と言ってくれたのだ・・。

そして 彼の曲選びも 時間をかけ慎重に選んでくれた・・。 初めてその彼の私のために選んでくれた曲を聴いた時は 涙さえ出て来た・・。 感動的に美しく 心に沁みる曲なのだ・・。

それから 振り付けが始まった。 彼の振り付けを曲と合わせて作り上げて行く作業は ただ見ているだけで 心が踊る。

まだまだ 始まったばかりだが・・生きてる喜びを又 見つけた様な気がした・・。

私の70歳の誕生日までには仕上げよう! と先生は言ってくれた。

生きててよかった!

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