何年も私の裁縫布地箱に眠っていた・・・黄八丈の着物。
黄八丈の着物と言えば 高級品! しかし・・この着物は すんでの所でゴミ箱に入る所だった・・。
母が シミだらけだし・・破けまくりだし・・もうこれは 着れない・・とゴミの様に扱っていたのを・・私が ”おっと~~!” と言って 貰ってきたのだった・・。
それ以来・・じゃ~ このボロを何年も持ち歩いている私は・・なぜに? 持ち歩くのだろう・・。 決して着れる代物でも無い・・。
物をドンドン捨てると言う私なのに・・これだけは どうしても捨てられない・・。 自分の着物であった訳でも無い・・。
ただただ・・この 黄八丈の柄・・色・・に取り付かれて・・どうしようもないのだ・・。
で・・いま 本気断捨離をしている私は このボロボロ黄八丈に手を付けた・・どうやったら私のこの ”愛着的気持ち” と ”絶対に着ないし・・柄から言って洋服にも出来ない無用の骨頂” と言う完全に相反する気持ちと戦う事になる・・。
もう ここでこの戦いに挑まないと・・死ぬまで引きずっている事になる・・。 最近は 自分がいつ死んでも・・いつボケてしまっても回りが困らない様に本気断捨離・・と言うか・・身の回りの整理をしているのだ・・。
私が明日死んでも誰も回りが困らない様に・・。
で 私が死ねば・・この黄八丈はどう考えても 即! ゴミ箱行きになる・・。 私が死ぬまでの間に私の身の近くで何かの役に立たないだろうか・・?! と言う心の戦いが始まる・・。
そして 勝利の方法を発見! 今作ろうとしているベッドカバー兼掛布団のガワにする事を思いついたのだ!
毎日使う物・・でも すり切れまくっているこの布は手荒に使うとすぐ破ける・・でも 布団カバーなら手荒に扱う訳でも無い・・。
そして この黄八丈の美しい色は 私の目を毎日楽しませてくれる!
そして やおら 着物のほどきにかかった・・。
外から着物として見ているのと全くもって 違う・・・本当にシミだらけ・・あそこにもここにも・・どす黒く黒ずんでいる所もたくさんある・・肌が直接当たる所はほとんどどす黒い・・。
そして腕の付け根とか動きが活発な所等は 沢山の継ぎ当てがある・・。 ほころびではない・・完全に布が縫い目に沿って破けているのだ・・。
それを又 後ろから当て布をしてまで縫い付けてある・・。 何回修理したのだろう・・その度に違う色の糸が使用されている・・。
余程この着物がお気に入りだったのだ・・徹底的に着たおした感満載なのだ・・。
ほどく時に慎重にしないと 布まで破けてしまう程・・布は傷んで来ている・・。
あまりにも汚いので・・ほどいて洗濯する事にした・・。
そして陰干しされて乾いた布に 慎重にアイロンを当てて行く・・すると・・子供の頃に嗅いだ・・箪笥の中の香りがした・・。
その内に霧吹きをしてアイロンの熱を当てると・・ おしろいの匂いまでする・・。 でしゃばった香水の匂いではない・・懐かしい・・おしろいが懐の中からほんのり匂う様に・・漂うのだ・・。
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縫いしろで一回も陽に当った事のない箇所がある・・そこはハッ!! とするほど真新しい布なのだ・・。 この布を触る度に ”絹ずれの音” シュッ!シュッ!と言う音がする・・。 今どきの絹の布は織り方のせいか・・とても柔らかい・・そしてどんなに絹100%であろうが・・この ”絹ずれの音”はしないのだ・・。
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ほのかに漂う香りは・・私の好きだった叔母の匂いなのかもない・・。
もうとっくに亡くなった叔母だけど・・彼女の魂が生きて漂っている様な気すらする・・。
彼女がこの黄八丈をふんだんに来て・・色んな染みをつけ・・ボロボロになっても何回も修理してなじんで来たのを 私は今共有しているのだ・・。
最後に彼女に会いに行った時は まさに認知症がかった老人の一人暮らしで・・真夏の熱中症になるのでないか?! と言うくらいの暑さの中で電気炬燵をつけ・・風呂にも長期に入ってない悪臭を放っていた・・。
家の中は着替えが散乱し・・狂気の図だった・・。
しかし・・私が彼女を風呂に入れ・・掃除をし・・ご飯を作ったら・・取って置きの梅酒をきれいなカットグラスに注いでくれた。 そして私に乾杯をうながした・・。
満面の笑みを浮かべ・・最高にうれしそうだった・・。
そして 私に箪笥の中からもって来て見せてくれたのが ↓の写真だ・・。
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私もあなたの様に若い時があったのよ・・・と笑いながら見せてくれた。
私が彼女の家を出る時は逃げる様にしてさった・・。その後は嗚咽が止まらなかった・・。 何もできない自分なのに・・後先考えずに行動してしまった自分の愚かさを後悔した・・。 |