彼女には タンゴダンスの世界に入ってすぐ出会った。 と言っても言葉を交わしたのは かなり後の事だった。
いつも かなりのお歳よりだけど・・・踊れるのだろうか・・・? と懸念する私の気持ちに反して・・軽くステップを踏んでいる。
そして こんなおばあちゃんと踊る男がいるのだろうか・・・? と言う懸念にも反して・・彼女は ジッと座っている暇が無いくらいの人気者なのだ・・。
何回か 言葉を交わして・・そして ある夜のパーティーで 私の隣に座ってくれた・・。
そして さっそく彼女には お声がかかり踊る・・やっと戻ってきたので・・突っ込んだ質問を私はした・・。 目いっぱいの質問があるが・・音楽が大きいので・・彼女の耳に私は怒鳴る様に聞く・・。
でも 彼女はシッカリした声で 答えてくれた・・。
彼女が15歳の頃 ダンスを始める・・。 彼女は今 93歳なので・・・もう 78年間も踊り続けている訳だ・・。
「でもね~~ 戦争の時は 男の人が まるっきりいなくなって・・全然踊れなかったわ~~」と 笑っていた・・。
まだまだ 私の彼女に対する好奇心は フツフツと湧いてくるけど・・・彼女は次から次へと 男性が寄ってきて踊るのだ・・。
私は まだ ビギナーだからか・・? 踊りに誘う男は皆無・・。 ずっと 壁の花・・。彼女が羨ましくて仕方が無い・・。
そして・・彼女は タンゴレッスンのクラスに毎週現れる。 いつも 私が溜息が出る程ステキな服を着ている。
豪華な服と言うのではない・・とてもカジュアルだけど・・とてもシークで彼女にピッタリ似合っているのだ。
それでも イタリアのブティークにでも有るような高価な物の感じもする。
そして その夜にきていたのは 私好みの色とデザインなのだ・・。 こんなデザインの服はどこで買ったのだろう・・?! と 私の好奇心は失礼の突破口をはみ出て・・質問をしてしまった。
すると! 彼女は 自分で作ったという。 裏と表の布の違いを使ってデザインしたの・・と 裾をひっくり返して見せてくれた・・。
ニクイデザインで 私は ん`~~!と唸ってしまった・・。
豪邸で館と呼んでもいいくらいの金持ちの家でのパーティーで彼女を見かけた時は 彼女だけが 水着持参で その家のバカでかい屋内温水プールで 一人気持ち良く泳いでいた・・。
英語の発音がチョット ニュージーランド人とは違うので・・どこからですか? と訊くと オーストリア人だった。
なぜ 今 ニュージーランドに住んでいるんですか? と訊くと・・それはね・・と うふふふ・・と笑った・・。
そして 彼女は オーストリアで ニュージーランド人の男性と出会って・・彼と結婚する事になって・・でも その時代は そう簡単にビザが降りなくて・・。
そのフィアンセは先にニュージーランドに帰って・・彼女のビザが降りてニュージーランドに行けたのは 1年後だったのだそうな・・。
そして・・その1年後にニュージーランドにやって来て 彼に会ったら・・彼は別の人と結婚していたの・・うふふふふ・・と 又 笑った・・。
その後 どうなったの・・? と 私は喉から手が出る程 知りたかったけど・・・またもや 彼女は男性のお誘いが来て・・立ち上がって 踊り始めた・・。
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